<< November 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< 「享楽」という叡智――不思議な演奏会 | main | Orangeの真の可能性に気づくこと >>
成人発達理論を巡る「都市伝説」


先日、Human Potential Labの御招きで、懇意にしている編集者の方と一緒に、インテグラル理論の導入的な講義をした。
特に現在注目を集めている成人発達理論に関しては、いろいろな「都市伝説」が蔓延しているので、そうしたものに惑わされないように特に重要な留意点について紹介したのだが、参加者の方々が思いの外に心を開いてそうした指摘を開いてくれたことは嬉しい驚きだった。
想像するに、これまでに無数の「経営書」や「成功哲学」を通してそこで紹介されている「夢物語」に触れ繰り返し幻滅をあじわうことで、人間や社会というものがそうそう簡単に変わるものではないことをある程度認識している人が増えているのだろう。
端的に言えば、社会の価値観や世界観が大きく変わるためには数世紀の時間が掛るのであり、その枠組の中で生きざるをえない個人は、たとえどれほど進歩的な価値観や世界観をそなえていようとも、そうした社会的・時代的な文脈と交渉をして生きていかないといけない。
その交渉の在り方はいろいろとあるとしても、過去の発達心理学者達が注意をしているように、そうしたスキルなしに発達理論にいれこむのは危険だということだ。
また、「……段階に到達すると……ができるようになり、社会的な成功を収めることができるようになるはずだ」という「物語」を安易に奉じるのも危険なことで、実は発達が成功や幸福を保証するものではないことは既に指摘されているところである。
これまで長年にわたりインテグラル理論等を勉強してきた友人と話をすると、そもそも「組織」(自己の所属する組織)を主語にして「ティール」(Teal・Advanced Systems Thinking)について云々することそのものに違和感を覚えるという意見をよく聞くのだが、実際正にそのとおりで、この段階の思考の特徴は、個人や組織や社会を呪縛するマクロ的な構造そのものを対象化して、それについて批判的に検討するところにあるので、単純にその構造の中で成功を収めようとする発想とは縁遠いものなのである。
こうしたポイントについて噛み砕いて説明をしたのだが、それほど違和感なく話を聞いていただけたことには、正直なところ少なからぬ驚きを覚えた。

 

Trackback URL
http://norio001.integraljapan.net/trackback/343
TRACKBACK