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吉松とラフマニノフ

久しぶりに東京藝術大学の奏楽堂で開催される「モーニング・コンサート」を聴いた。
年間のscheduleが公開されたときにまず目に飛び込んできたのが、今日の第12回だった。
吉松 隆の傑作「サイバーバード協奏曲」が聴けるという。
これは万難を排して聴きにいかなければならない……

演奏が開まると途端に釘付けになった。
この作曲家のファンであることもあり、この作品を生で聴けるというだけで嬉しいのだが、この最高の音響効果を誇る奏楽堂の空間は、演奏に気品とあたたかみを付与して、一段との演奏の質を高めてくれる。
もう喜悦の泪が溢れてくる。
何という作品の素晴らしさ!! そして、ソリストの五島 知美さんの演奏の何という素晴らしさ!!
この作品には須川 展也や上野 耕平による名演奏があるが、少なくとも、五島さんの演奏を聴いている間は、それらの演奏を完全に忘れることができた。
技術的には全く危なげないのはもちろんのこと、その気迫は凄まじいもので、ときにはまるで格闘家を眺めているように感覚にとらわれた。
周知のように、この協奏曲にはロックやジャズの要素がふんだんに盛り込まれた非常に愉しい作品であるが、そこにはまた青空のように澄んだ躍動と哀しみと瞑想が息づいている。
30分に満たない作品だが、聴いていると体中に感動と興奮が満ち溢れて全身が爆発しそうになる。
今日は正に至福の時間をあたえられた。
伴奏は想像していたよりも小編成だが(第1ヴァイオリンは8人)、山下 一史の指揮する藝大フィルハーモニアの演奏は冒頭より非常に充実しており、心から感激した。
「モーニング・コンサート」は基本的に在学生をソリストに迎えた協奏曲が中心となるが、時として驚愕するような充実した伴奏に出逢うことがある。
今日のも正にそうしたものだった。
そして、今日、会場を満席にした聴衆の高い集中力にも感謝である。

前半だけでもう満腹状態で、後半のラフマニノフのピアノ協奏曲第2番に関しては、十分な集中力を保てるか心配だったのだが、鈴木 優輔さんのピアノ・ソロの美音に魅了され、これも深い感動をあたえられた。
冒頭の鐘のような音を耳にするだけで、無為に聞き流せない演奏であることがわかる。
決して感傷に耽溺することなく、比較的に早いテンポで音楽を奏でるのだが、ひとつひとつの音の粒の中に心を揺さぶる力が息づいているために、全く薄味にならない。
素晴らしいセンスの持ち主だと思う。
また、伴奏が、吉松の伴奏をさらに凌駕するほどに圧倒的な音楽を奏でる。
特に第1楽章の盛り上がりの轟然とした響きにはドキリとした。
昨年の日本音楽コンクールの本選で同曲を続けて2回ほど聴いたが、今日の演奏はそれらの演奏を質的に完全に凌駕していたと思う。
鈴木さんの演奏を聴いていると、この作品が作曲者の魂の蘇生と勝利の凱歌を奏でる音楽であることが良くわかる。
数十年も聴きつづけて、少々聞き飽きていたこの作品の素晴らしを見直させてくれた。
これまた感謝である。