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Virtuoso Youth Orchestra 第6回定期演奏会

代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催されたVirtuoso Youth Orchestraの第6回定期演奏会を聴いてきた、
今年の聴き納めとなる演奏会である。
目当ては、前回の日本音楽コンクールで優勝した大関 万結さんの協奏曲だが、今回は、それに華を添えるように、荒井 里桜さんと関 朋岳さんという日本音楽コンクールと東京音楽コンクールの覇者がオーケストラに名を連ねている。

今日は晴れていたこともあり、JRの原宿駅を降りて、明治神宮の森林を歩いて会場まで行ったのだが、神域特有の清澄な空気が流れていて、意識が浄化されるような感覚をあじわい、会場入りすることができた。
演奏会の会場の音響は必ずしもいいものではないのだが、何度も落涙してしまうほどに充実した演奏会だった。
また、将来、日本の音楽界の支えていく素晴らしい演奏家達の熱演に包まれながら、静かな幸福感に満たされた。

あらためて振り返ると、先ず指揮を担当した大森 大輝さんに大きな拍手を送りたい。また、今回の実に興味深い曲目を構成した、そのセンスの良さにも。
今 年間に30〜40回程の演奏会を聴くが、企画側がその演奏会をどのようなコンセプトにもとづいて構成しているのかということについて明言されることは、ほとんどない。
ときには、それらしい作品を前半と後半に漫然と並べて演奏会を構成してしまっているように思われることもある。
そうしたものとくらべると、今日の演奏会は全体を貫くコンセプトが明確であり、また、個々の作品の内容も演奏も非常に充実していた。
とりわけ、最初の「前奏曲と愛の死」〜「トリスタンとイゾルデ」(ワーグナー)は、冒頭のチェロの深い音色にはじまり、最後まで心を鷲掴みにされ、この作品がこれほどまでに魅力的なものであることをあらためておしえられた。
また、「アダージョ」〜「交響曲第10番」(マーラー)は、並外れた実験精神を体感させてくれる充実の演奏で、聴きながら、作曲家が実は心身共に非常に充実しており、さらなる音楽表現の地平を開こうとしていたことを実感することができた。

後半のメンデルスゾンの協奏曲のソリストとして登場した大関 万結さんのバイオリンであるが、東京オペラ・シティで演奏されたあのシベリウスの協奏曲で示した美質がさらに際立って発揮された演奏だった。
ひとことで言えば、それは芯に鋼が通っているかのような緊張感漲る求道的な音で、そこには強靭な意志で自己を高めて演奏行為に臨む奏者の真摯な姿勢が実感できる。
また、舞台上の存在感も実に堂々としたもので、それが弱冠18歳の奏者のものとは到底思えない。
いっぽう、今回のような作品においては、そうしたアプローチだけでは処することができない要素があるのも事実であり、個人的には、第3楽章でほんの僅かのあいだ垣間見せてくれた情熱的なエロスをもっともっと開放していいのではないかという感想をいだいた。
いずれにしても、個人的には、大関さんの場合には、表現者としての自己の特性を深く理解したうえで、演奏者としての個性を確立しているように思われるので、今後は、真の自己の魅力を発揮させてくれる作品と出逢うと共にそうした個性に深化と変容をもたらしてくれる異質性を自己の内に育んでいくべき段階を迎えているのではないだろうか……。

ともあれ、同世代のバイオリニストとしては、奇しくも今日舞台に昇った、荒井 里桜さんと大関 万結さんが注目すべき才能だと思っている。
二人のスタイルは大きく異なるが、共に舞台人に必要な華をそなえている演奏者であり、今後がどのような深化を遂げていくのか非常にたのしみである。

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